前回に続き卒業研究発表会で発表された論文をご紹介したいと思います
今回ご紹介する論文は私自身も被験者として参加した研究です
「カイロケアのアンチエイジング効果の可能性 ~加速度脈波による検討~」
・はじめに
わが国は2007年より総人口に占める65歳以上の割合が21%を超え、超高齢社会となった。
これに伴い加齢よる疾患も増加傾向にある。医療費では循環器系疾患が21.2%(平成19年)を占め
他の疾患を抑えて一番の医療費負担の原因となっており、特に高血圧者への投薬は
多くの場合、生涯行われるため医療費増大の一因となっている。
カイロプラクティックケアには以前から血圧の改善に効果があると言われており
本工の卒業論文でもいくつかの研究でその効果が示唆される結果が出ている。
血圧の改善は動脈硬化の軽減や予防など、血管へのアンチエイジングが期待できる。
本研究では、カイロケアが循環器系に与える影響をされあに細分化した研究を行うべく
血圧を決める要素である心拍出量と総末梢抵抗のうち、後者に対するカイロケアの影響を明らかにし
カイロケアが血管に及ぼすアンチエイジング効果を検証すべく加速度脈波計測器を用いて
実験を行った。
・対象と方法
RMIT大学日本校の生徒16名の男女を対象に、上部胸椎アジャストメント群、学生クリニック群
コントロール群の3群に分け、上部胸椎アジャストメント群は加速度脈波測定後、上部胸椎に
アジャストメントを行い、直後に再び加速度脈波を測定した。
それから一週間後に一度上部胸椎にアジャストメントを行い、一ヶ月後に再びアジャストメント前と
アジャストメント後で加速度脈波を測定した。
学生クリニック群は、加速度脈波測定後、週に一回学生クリニックにてカイロ施術を受け
一ヶ月後に再び加速度脈波を測定した。
コントロール群は加速度脈波測定の一ヶ月後に再び加速度脈波を測定した。
加速度脈波測定器はTAS9を用い、脈波の分析項目である拍出強度、残血量、動脈血管弾性度を
総合的に評価した末梢血管健康度と、心臓の自律神経活動を測定するLF値、HF値及び
心臓の副交感神経調節の機能評価の値であるRMSSD値を検証事項とした。
統計学的検証では対応のあるT検定を用い、有意水準を5%とした。
・結果
アジャストメント前後における血管健康度の変化は人それぞれであった。
アジャストメント群のアジャストメント前と一ヶ月後を比較すると、血管健康度は6人中5人が上昇し
平均して6ポイント上昇した。
学生クリニック群の開始日と一ヶ月後を比較すると血管健康度は4人中4人が上昇し、平均して
12ポイント上昇した。
コントロール群の開始日と一ヶ月後を比較すると血管健康度は6人中4人が下降し
平均して2ポイント減少した。
アジャストメント群では、実験前後で有意差は認められなかったが
全体的には血管健康度は上昇する傾向にあり、学生クリニック群では
有意に血管健康度が上昇した。
またそれらの結果は心臓における自律神経活動の変化とは関連性が見られなかった。
・考察
本研究では、カイロプラクティックの介入は血管健康度を上昇させる傾向が強く
今までは血圧の改善がみられるという大まかなレベルでその効果を示唆されていたが
本研究によって総末梢抵抗への改善効果もあることが示唆される。
末梢血管には交感神経が分布しており、その活動によって
血管の収縮が行われることが分かっている。
本実験では、総末梢抵抗への改善効果が示唆されるが、心臓の自律神経機能への影響は
個人によって様々であり、心臓への自律神経機能への影響と血管の総末梢抵抗の関連性は
確認できない。
椎間関節や椎間板、硬膜、前後縦靭帯を含む、脊椎の痛みを感じる構造のどこかが損傷を受けると
反射性の筋スパズム(筋緊張)が起こる。
Korrの"慢性的分節促通"の理論では、側角細胞の持続的刺激が交感神経のニューロンを促通させ
花瓶となった交感神経系により筋骨格系の機能障害や内臓の疲弊、疾病を永続させる要因となると
主張している。
本研究において、得られた結果をみると、上部胸椎のみをアジャストメントした群と
学生クリニックにてフルスパインのアジャストメントを必要な分節に受けている群では
後者の方がこの慢性的分節促通をつくり出していると思われる椎間関節をより的確に
改善させていると思われるため、血管としてより良い血管健康度へと繋がったのではないかと
推察できる。
また、交感神経が分布している胸椎と第三腰椎までの分節によって
分布している末梢血管の部位も異なると考えられ、総末梢抵抗の改善が
必ずしも心臓の自律神経機能の活動とは完全に連動しないことも考えられる。
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