第2回 菅原明子博士 レベルアップ研修・講義内容
2015年5月15日(金) 10:30~12:00
■現代の栄養学の問題点
今年は戦後70年になる年で、戦争が終わってから糖尿病は飽食の時代と共に増えていきました。糖尿病については女子栄養大学と京都大学が有名で、特に京都大学は日本一と言われています。
女子栄養大学では戦後すぐに4群食事法がつくられ、京都大学では6群食事法が考え出され、採用されています。京都の方では、乾物や海藻などが含まれていますが、4群の方では戦後、タンパク質が不足しているという考えから、これらの食物繊維を多く含む食材が無視されているという現実があります。
これは現代の食事に照らし合わせると明らかに時代遅れで、このままでは栄養士や管理栄養士の資格を取った人であっても、糖尿病や腎臓病、ましてやガンは治せません。
最近では、定食屋さんでも十穀米や五穀米を出しているところがあるにも関わらず、未だに病院食で白米が出ているという現状は、明らかに疑問です。
しかしその現状がずっと変わらないということは、日本の医療制度や栄養学会に根本的な問題があるとしか言えません。
■1400kcal食の弊害
ダイエットをするということは、リバウンドという問題が常に付きまとっています。どのようなダイエットをしてもほとんどの場合はリバウンドが起こってしまいます。しかし実験では、スープCを使ってカロリーを1100kcalに抑えた時(スープC、50)にはリバウンドが起こりませんでした。
今回の実験で使用したネズミは若かったので、脂肪の合成も盛んでスープC、100(人間でいうと1800kcalまたは普通食に相当)の食事を与えた場合では、どんどん体重が増えていきました。
ではスープC、75(1400kcal相当)はどのような結果だったのでしょう?
答えは1400kcal相当の食事では、たとえスープC、であっても体重は増えていきます。
1400kcalというと、危なくないダイエットをしているといったような状態なので、今回の実験でもはじめの1か月は順調に体重が減りましたが、そこから先は上がっていきます。
これが今、一般的にやられているダイエットで、全てをバランスよく食べることがベースにあるため、ご飯も食べ、おかずも食べますが、全体として400~500kcal程度は減らして蒸し物を多くして油を使わないようにするといったような内容です。
このようなダイエット法では、長く続ければ続けるほど、体重が増えていってしまうことをこの実験のデータは物語っています。多くの人が信用している「カロリーを制限すればその分だけ痩せていく」というのはあくまで定量的なダイエットな理論です。
どのような科学者も医学者も一日400kcalカロリーの制限を1か月行った時には「400kcal×30日=12000kcal」という計算式を立てます。脂肪は1gあたり約9kcalのエネルギーを持っていますが、細胞には水と脂肪が半々程度含まれているので、4.5で割って何gの脂肪が12000kcalで燃えるのかということで、計算をしていきます。
この計算では、大体一か月で2kgは痩せていくだろうという結論になります。初月に2kg、そして翌月に2kg、さらにその翌月も2kgと、長く続ければ半年で12kg程度痩せるのではないかという理論上の数値が出てきます。ところが理論と実践は違います。
実際に、これに基づいたバランスのとれた栄養と安全なカロリー制限のダイエットを行っても、最終的にリバウンドが起こって体重が増えてしまっているというこの矛盾を、今の栄養学は解けていないのです。
栄養大学でもダイエット講座を開いていますが、1か月で終わってしまうので、その時には2kg程度体重が減りますので、それ以降も同じように減っていくと仮定しているために2か月目からのデータは無いのです。
今の栄養学の問題点は、ヒトを使った実験をしないこと、動物実験であっても2週間以上の実験をしないことです。なぜそれをしないのか?
今回のスープCの実験では、ネズミはヒトとの寿命の割合から72日間の実験でヒトの1年に相当する期間の実験をしましたが、費用は1000万円ほどかかりますので、まずコストの問題があります。もう一つは72日間も動物の栄養や状態の管理などをきっちり行える根性のある科学者がいないということがあります。
ですから1400kcal食では、続けるほどリバウンドが起こるというデータについてはほとんどの研究者が知りませんし、分かろうともしないのです。
それに対してスープC、50(1100kcal)食では、1年を通して体重が減少しています。
しかしこれがスープCではなく一般食の1100kcalでは、初期に体重減少が見られても、一定の期間を過ぎると頭打ちになって継続して体重が減ることはありません。
一般食とは、炭水化物、脂質、タンパク質がバランスよく含まれている食事を指していて、同じ1100kcalでも停滞期に入るとそれがずっと続いてしまいます。
その理由は、ダイエットでも一見バランス栄養食の方がよく見えますが、炭水化物を摂ってタンパク質の割合が減っているので、基礎代謝(体温)が下がり、結果的に脂肪の燃えにくい体になっていってしまうからです。これでは単に冷え性になった状態に体が馴染んだだけで、いくら1100kcalまでカロリー制限をしても、体重は減りません。
このことからも分かるように現代栄養学は1400kcal食の弊害を分かっていないのです。大学病院などで1400kcal食は最も好まれる方法ですが、これが実は一番危険なダイエットだという認識を持たなければいけません。
なぜ1400kcal食が危険なのか、それはアドレナリンが出続けることにあります。すなわちお腹が空いた状態がずっと続くということです。自分が食事に不満足だとダイエットは辛いものになってしまいますが、その原因はアドレナリンの量が大きく関係しています。その中でスープC、50(1100kcal)に抑えた食事では、アドレナリンの分泌が少ないため、辛くなくダイエットができます。
したがって中途半端なダイエット(1400kcal)が最もアドレナリンの分泌を増やして、ストレスを高めてしまうということがこの動物実験で明らかになっているのです。
この事実を世界中の栄養学者が気づいていないのです。より安全でより長期間続けられるダイエットとして未だに1400kcalダイエットを推奨しているのです。
■脂肪を燃焼するための体のスイッチが切り替わるかどうかが重要
今までの人間の歴史は、99.9%が飢餓の時代です。それをずっと生き延びてきて今があるわけです。飽食の時代になったのは1970年ごろになってからです。それ以降に生まれた人や戦争を体験した人たちがたくさん食べるようになってからアルコール中毒症、糖尿病、高血圧、心筋梗塞がものすごく増えるようになりました。
私は社長の方たちと対談することが多いのですが、「私たちの世代がこれだけ三大成人病になるのはやはり戦争中にきちんと食べなかったからですか?」という質問を受けた時に、私は「それは違います」とはっきり言いました。私たちの細胞は長い物でも1年以内に全てつくりかえられていますので、食べなかったことが問題ではありません。逆に食べ過ぎが問題なのです。
ずっと飢餓の時代を生きてきた私たちは、高効率のエネルギーである脂肪をいざという時のために蓄えておきなさいという情報がDNAに刻まれています。ですから美容のために脂肪を燃やしたいと頭で思っていても、体はそれをしたがらないのです。
したがって脂肪が本格的に燃えるのは、飢餓状態になってからでなければなりません。1400kcal食では、カロリーが中途半端なので、脂肪が燃えるスイッチが入らないのです。これは飢餓ではないという体の判断から代わりにアドレナリンが分泌されて、脂肪ではなく、肝臓に蓄えてあるグリコーゲンを使ってエネルギーを供給します。また備蓄してあるコレステロールも血液中に出るようになり、肝臓が傷めつけられます。このコレステロールは短期間には燃焼しないので、血管に溜まってしまうものです。
アドレナリンが分泌されている状態は、イライラして目つきは悪くなるし、脂肪は燃えないし、動脈硬化は進むし、良いことはありません。
このことから分かるようにダイエットを行う上で最も重要なのは、体が飢餓の状態にスイッチが切り替わるかどうかなのです。
私たちの科学は、未完成品であり、冒頭にお話しした糖尿病食や1400kcal食の弊害について認知されるまでにはまだ多くの時間がかかるかもしれません。やっとアルコールと普通の食事のカロリー交換表が見直された程度です。
では、どうすればこのような問題をクリアして、健康的で効果的に脂肪を燃焼することができるのか?答えは簡単です。
スープC、50を与えたネズミは、非常にアドレナリン分泌が少ないのです。これはとても不思議なことで、普通食を食べた時よりも少なくなっています。これは脂肪燃焼のスイッチが完全にONになったことを示しており、蛇口を捻って水がジャージャーと流れるように、塊だった脂肪が液体になって血液中に流れ込んでくることでエネルギーとしてどんどん燃焼されるのです。
この状態(体が飢餓を認識する状態)をつくるには1100kcal食を4~5日以上やらなければいけません。脂肪燃焼のスイッチが入らない1400kcal食では、グリコーゲンをブドウ糖に変換して賄うのですが、2時間程度で枯渇してしまうので、低血糖になり、めまいがしたり耳鳴りがしたり、目がかすむといった状態に陥ります。これを補うためにアドレナリンが分泌されてさらに肝臓からグリコーゲンを供給しようとするのです。
それに対してスープCの高タンパク低糖食は、このような体へのストレスが限りなくゼロに近い最も合理的で科学的なダイエット方法なのです。
また血清中の中性脂肪量に着目してみると、普通食ではもちろん高い状態ですが、一般食で1100kcalにしたとしてもあまり減ることはありません。しかしスープC、50食だけは大幅に減少が見られました。この差は、食事の質がどれほど大事であるかということを示しています。一般食で1100kcalを摂るということは、どうしても糖質を食べるということになります。糖質を食べるということは、飢餓の代謝のスイッチは入らないので、摂取した分の糖質を燃やしてから脂肪が燃えるので、血清中の中性脂肪はほとんど変化しません。
ですからカロリーを減らせば、必ず中性脂肪が減るということはないのです。
中性脂肪が高い状態が続けば、それが血管にこびりついて動脈硬化の原因になります。このようにコレステロール、中性脂肪などが血管にこびりついてしまうと多くの場合取り除くことはできません。
しかしスープC、50の食事をすれば、脂肪燃焼にスイッチが入っているので、体脂肪よりもまず先に血清中の中性脂肪、コレステロールが使われ、気づかないうちに血管にこびりついたものが燃えて血管を健康に保つことができるのです。
もしスープCが手に入らない場合でも、高タンパク低糖食をすれば大丈夫です。どうしても甘いものを食べたい場合は、ダイエットシュガーを使ったり、0calのお菓子など食べることでコントロールすることができます。
■1100kcalダイエットは全く危険ではない
従来の考え方では、基礎代謝よりも低い1100kcalまで摂取カロリーを下げることは、健康面から考えて危険であると多くの栄養士の方が言いますけれども、もし本当に危険であれば、細胞を構成しているタンパク質量が不足しているはずです。しかしこの動物実験で、1100kcal食を続けても、血清中のタンパク質、アルブミン量は一般食を摂っている時となんら変化は見られませんでした。その理由は一日60g、男性であれば70gぐらいのタンパク質をきちんと摂っているためです。
またカルシウム、カリウム量にも変化は見られませんでした。与えているエサの量は半分になっているにも関わらず100%の一般食と変わらない数値が出ています。これは1100kcalで充分必要量が足りるように体ができているからなのです。したがって1100kcal食をしてもカルシウムが不足して骨密度が低下する心配はありません。
血糖値に対するデータでも1100kcal食は低血糖になることになく、安全な数値を保っていました。さらにインスリンの分泌の値はスープC、50食が最も少なく、膵臓への負担を軽減して余分な脂肪の蓄積を抑えることもできました。
糖尿病の治療に最も有効な食事はこのスープC、50食であるということがよく分かります。
脂質代謝が行われた時には、代謝産物としてケトン体が生じますが、これが体を酸性化して良くないと言われています。スープC、50食では、血清中のケトン体の量が一般食100の4~5分の1以下になります。ケトン体が多くなると骨の末端が溶け出すので、痛風になりやすくなります。痛風の方はスープC、50食を続けることが効果的です。
■正しい食事は薬よりもはるかにパワフルな治療法である
このように見ていくと、様々な病気はこの食事法で良くなるということがお分かりいただけると思います。肝臓病、高血圧、高脂血症、痛風、心筋梗塞、アトピーが同じ食事法で改善していくのです。微量な栄養素をきちんと摂れていれば、食事はとてもパワフルな治療法になるということです。しかし、それが全く世の中に浸透していないのが現状です。
現代の医療は、検査をして薬を出すというコンピューターのような作業になっています。これは救急の外科手術のようなものを除いた慢性の疾患については、コンピューターでも医師と同等またはそれ以上のことができしまうということです。
その中で食事はまだ多くの可能性があるのですが、マスコミに対する力が弱いために、正しく広まっていないのです。
■運動機能にも食事が関わっている
高齢者に多く見られる尿失禁は、下腹部の筋肉が衰えてしまっているために起こるものですが、このような筋肉の衰えを抑えて、最大限に筋肉の発達を促すための食事がやはり高たんぱく食なのです。このような食事をした上で、縄の無い縄跳び運動をするだけでどんどん筋肉量が増えていきます。
なぜ縄跳び運動が良いかと言うと、高齢になると自然と重心が後ろになりがちですが、縄跳び運動を行うと自然と重心が前になり下腹部に力が入るようになります。
後ろ重心では転倒しやすくなるので、前重心にしていくことでバランス感覚も良くなります。
最近では子供も重心が悪くて転倒することが多く、その際に手のつき方が悪く腕を骨折する場合もあります。このようなケースでも縄跳び運動は有効です。
■スープCと骨密度
最近では、無理なダイエットをした結果、若くして骨密度が低下している人が多く見受けられます。ではスープCダイエットはどうでしょうか?
驚くことにスープC、50食を与えた群は、一般食を含めた他のどの食事よりも大腿骨の骨量が多かったのです。これは従来の栄養学では考えられないことです。カルシウムの摂取量が半分になっているにも関わらず、骨密度が高くなっているのですから。
この摩訶不思議なデータについては、なぜこのような結果になるか分かっていませんが、現段階で考えられることとしては、スープC、50食を与えた群は高タンパクで筋肉の発達が良く、体も軽いので、最も活動的だったということが挙げられます。
食事量が多い群は、寝ていることが多かったのですが、スープC、50食は良く動いていました。結果的に良い骨密度に繋がったと考えられるのです。
高齢者で最も注意しなければならないのが骨折ですが、多くの方が食事の重要性に気づいていないので、つまみ食いような食事の仕方になったり、甘いものを食べ過ぎてしまうことがあります。
甘いものを食べると、ブドウ糖に変わるためにTCAサイクルという完全燃焼経路に入る際に、ビタミンB群が非常に多く消費されます。もしこの時にビタミンB群が不足していると、不完全燃焼になるので乳酸が生じます。乳酸が増えると体は酸性に傾きますので、体は骨に含まれるカルシウム、重炭酸ナトリウム(重炭酸塩)を血液中に溶かし出すことで中和しようとします。それによって酸性化を抑えながら乳酸を腎臓まで運んで、尿として排泄します。
その結果、炭水化物を多く摂る人(カロリーを多く摂る人)は骨が溶け出すので、骨が弱くなります。また重炭酸ナトリウムは尿で排出されますが、カルシウムは排出されないので、血液中に残り、血管壁に付着するので、動脈硬化を進行させます。
ビタミンB群を多く含む食材としては、切り干し大根や干しシイタケなど乾物類、豚肉、玄米などに多く含まれています。
乳酸が溜まるとむくみや肩こりが起こります。このような症状のある方は、ビタミンB群を多く摂るべきです。エビオスは安くて歴史のあるビタミンB群サプリメントでお勧めです。また食物繊維を多く含む食品を摂ると、腸内の善玉菌のエサになるので、腸内環境が良くなります。腸内環境が良くなると、善玉菌がビタミンB群をつくるようになるだけでなく、便秘なども解消されます。スープCにはビフィズス因子が入っており、腸内細菌叢を良くしていきます。
■糖質を摂りすぎると脳もむくむ
非行を繰り返す子供たちは、清涼飲料水を大量に飲んだり、甘いもの、カップラーメン、スナック菓子を習慣的に食べているので、カロリーが炭水化物系に偏っている上にビタミンB群を含む食品が不足しているので、全身がむくんでいます。そして最終的には脳がむくみます。大脳に乳酸が溜まるとそれを中和するためにむくみが起こるのです。
このように脳にむくみが生じると記憶障害やうつ病、被害妄想、うそをつく、キレやすくなるなど様々な精神疾患が起こってきます。これは今まで言われてきたアルコール中毒症の症状と同じです。
Q&A
Q:今までの間違ったダイエットや運動不足で基礎代謝が下がり、スープCダイエットの1100kcalと釣り合ってしまって体重に変化が見られない場合はどうすればよいですか?
A:代謝を上げるためには、まず汗をかける状態をつくることが重要です。そのためにお風呂の入り方を工夫して、朝晩で汗をかくようにしてもらうようにする、またはウォーキングで1万歩程度歩いていれば、スープCの高たんぱく食で自ずと筋肉が付いて代謝が上がっていくので、脂肪が燃焼していく体になっていきます。
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