佐藤ドクター レベルアップ研修
2014年10月8日(水) 10:30~12:00
テーマ「睡眠と免疫」
@エルクレスト セミナールーム
講師は、日本橋清州クリニック院長、佐藤義之先生です
・メラトニンを学ぶ
寝不足が体に良くないことはよく知られていますが、寝すぎも寿命を縮め、死亡率が最大で40%も高くなります。
最も長生きの方の平均睡眠時間は7時間と言われています。
でも同じ7時間眠るとしても、午後10時から寝るのと、深夜2時から寝るのでは、全く効果が違います。
成長ホルモンとメラトニンは夜間しか分泌されません。特にメラトニンは免疫、リンパ球に影響力が大きく、このホルモンの分泌量が多いか少ないかによって質の良い睡眠かどうかが決まります。
アメリカでの発表では、週3日以上の深夜勤務者は、乳がんの発症リスクが昼間のみの勤務者と比べて2倍高くなります。
2005年に日本で発表されたものは、深夜勤務者は日勤のみの男性に比べて前立腺がんの発症リスクは3.5倍になると述べています。
高血圧の方の40%が眠りに問題があり、本来なら副交感神経が優位である夜間に交感神経が緊張しています。我々の体は騒音に慣れるということはなく、たとえ慣れているように見えても、それは防御反応が起こっているだけで、体には負担がかかっています。
〈睡眠について〉
ノンレム睡眠:深い睡眠
レム睡眠:浅い睡眠
睡眠はまずノンレム睡眠から始まり、1時間半から2時間続きます。レム睡眠はノンレム睡眠に続く浅い眠りで、10~30分続きます。
レム睡眠とノンレム睡眠の時間は、個人差が大きく、睡眠を改善したいのであれば、自分の睡眠のサイクルを理解するために目覚める時間を調整して自分に合った睡眠時間を見つけていく必要があります。
・夜間に目が覚めても当たり前と思うこと
私たちは一晩の睡眠中に平均して4日のノンレム、レム睡眠を経験します。レム睡眠時は浅い眠りなので、目が覚めることがあります。
・寝つきが悪くて当たり前
床に入って、第一回目のノンレム睡眠に入るまでに15~20分かかります。この間はうとうと状態で目が覚めやすくなっています。
寝つきが良いと言うことは、睡眠不足になっているか、疲労がたまっているのかもしれません。
・週末に寝だめはできるか
答えはできません。効果が無いばかりか、体のリズムを崩す可能性があります。
すなわちメラトニン本来の分泌パターンを崩すということです。
・気持ちよく起きられない理由
1.丁度、目が覚めた時がノンレムの深い睡眠であった場合
2.十分にメラトニンが分泌されていない場合(質の悪い睡眠)
たまに早寝、早起きを使用と思ってもそれは間違っています。
私たちの起床時間は眠りについた時間ではなく、起きた時間で寝る時間が決まる仕組みになっています。(人間の体は目覚めてから15~16時間後に眠くなるメカニズムになっています)
また遮光カーテンはあまり使うべきではありません。
本来であれば、カーテンのない部屋で外が明るくなると徐々に光を浴びることで、スムーズな良い目覚めに結びつきます。
光を感じることで睡眠そのものが浅くなり、レム睡眠からの目覚めがスムーズになります。
低血圧と睡眠は関係ありません。
・眠気のサイクル
1. 疲れると眠くなる(疲労物質の蓄積、体液、組織の酸性化)
2. 夜になると眠くなる(光の関係、メラトニン分泌)
3. 体温(深部)が低くなると眠くなる(自律神経の働きで代謝を落として、深部体温が低下)
・朝方の人、夜型の人
朝型の人:寝起きが良い
早く起きているから早く眠くなる
メラニンの分泌が良い(質の良い睡眠)
夜型の人:夜眠くならない
夜、起きているということは人工照明をつけている時間が長い
メラトニンの分泌が悪い(質の悪い睡眠)
眠りが浅くなるので、寝起きが悪い
朝型も夜型も体が代謝を落として体温を下げる時間は同じで、大体9時ごろになります。
しかし、朝型の人はスムーズに体温が下がり、深部体温が最低になるのが午前3時、夜型はゆっくりと体温が下がり、深部体温が最低になるのが午前7時頃になります。
そして朝型の人は、午前3時からスムーズに体温が上昇し、夜型の体温上昇は午前7時以後になります。
〈メラトニンについて〉
脳の中央にある松果体から分泌されるホルモンで、語源はメラニンの「メラ」とセロトニンの「トニン」から名付けられました。
メラトニンは通常、日没頃から分泌が開始され、午後7時から血中濃度が上昇します。
そして午前2~3時にピークを迎え、午前4時にはほとんど分泌が停止します。
要するにメラトニンの分泌は日没頃から始まり、そして約12時間分泌が続きます。
夜型の人は、メラトニンの血中濃度の上昇は遅く、言い換えれば血中濃度はゆっくり上昇します。その理由は、遅くまで人工照明の中で起きているので、分泌開始時間は同じでも、その後の分泌量は少なめになります。そして遅くまで起きて活動しているので深部体温が低下しにくくなっているのです。
メラトニンの分泌を最も支配するのは自然光(日光)で次に影響を与えるのが人工照明です。
・メラトニンの機能
1.
眠りを促す、睡眠を確保
2.
免疫賦活作用
メラトニンは我々の体が夜間に休息し、回復するというサイクルを形成するという重要な機能を果たしていますが、そのピークは午前2~3時です。ちょうど時を同じくして血中の免疫細胞の数もピークを迎えます。免疫担当細胞がピークを迎えるメカニズムは副交感神経によるものです。
免疫系細胞のTリンパ球にメラトニンのレセプターが存在することが確認されています。
レセプターが存在するということは、Tリンパ球に大きな影響、役割を果たすという意味でTリンパ球が分泌するインターロイキン4を増加させることが確認されています。
午前2~3時は免疫活動において最も重要な時間帯です。
〈成長ホルモンについて〉
成長ホルモンは、成長期には成長に関わりますが、それ以降も代謝面で重要な役割をするホルモンです。特に体の細胞の再生、活性化の役目とタンパク合成を促進して、免疫関連物質を合成する働きを持っています。このホルモンも午前3時以降はほとんど分泌されません。
床に入って、15分後から始まる第一回目のノンレム睡眠の時に一気に分泌され、それ以後はどんなに長く眠っても分泌されません。
成長ホルモンの分泌のピークは15歳で、20歳で半減、40歳を越えたら分泌させる機会を減らしてはいけないホルモンです。
そのためには遅くても12時までに床に就く必要があります。
眠りについた最初の2時間が万病を防ぐとも言われています。
成長ホルモンには、脂肪を分解する働きがあり、寝ている間に多く分泌されることで、脂肪が燃焼しやすい状態をつくってくれます。
成長ホルモンの分泌が多い若い頃は、いくら食べても太らなかったのに年齢と共に食べ過ぎていなくても脂肪が落ちにくくなるもの納得できるところです。
夜更かしで睡眠が短くなると、まず成長ホルモンの分泌量が低下します。さらに睡眠時間が4時間になると、グレリンが28%増加し、レプチンが18%減少します。
こういった状態が糖尿病、高脂血症、動脈硬化につながることは言うまでもありません。
肥満は、睡眠時無呼吸症候群の原因にもなります。もし起床時に口が渇いているようであれば口呼吸になっている可能性があり、のどの粘膜の乾燥による菌やウィルスとの暴露の機会が増える、日中の眠気など様々な障害が出てくる可能性があるため、注意が必要です。
〈脳の成長と睡眠〉
脳波20歳まで成長し続けます。3~5歳までの子供は一日11時間程度の睡眠が必要です。
睡眠の質が悪いまたは必要な睡眠時間に満たない子供の約半数の44%が三角形を書くことができません。
子供は4歳ごろまでに斜めの線を描く能力が発達し、5歳までには線と線を結んで、枠をつくる能力が身に付き、三角形を書けるようになるのが発達の1つの基準になります。
質の良い睡眠をとっていないと、脳の発達に多大な影響を及ぼします。ですから「寝る子は育つ」のです。
〈冷え性の人が眠りにつけない、寝つきが悪いと訴える理由〉
眠くなる一番の原因はメラトニンですが、もう一つ深部体温が下がることが眠くなるメカニズムです。深部体温は、末梢から熱を放散することで下がるため、冷え性の人はこの末梢における熱の放散がうまくできないため、深部体温がうまく下がりません。
熱の放散は血液を介して行われるため、寝る前に手足を温めておくと良いです(足浴、湯たんぽ)
末梢血管が拡張し、熱を放散、放出しますが、この末梢血管の拡張は、血中を流れるメラトニンの直接作用の他に自律神経が関与しています。
従って、会社帰りのスポーツジムは、運動によって交感神経が優位になり、体温が上昇するためスムーズな睡眠の質が悪くなる可能性があります。ですが夜7時までの運動であればお勧めです。
また、夜遅くに食事を摂取するのも、質の良い睡眠のためには良いとは言えません。
食事をすると、深部体温が上昇し、眠気のサイクルと逆のメカニズムとなるので、夕食は就寝の3時間前に済ませるべきです。
体は寝ている間に代謝、解毒、排泄を行いますが、これらと消化吸収は本来同時にはできない仕組みになっています。
〈夜更かしと肥満に関わるホルモン〉
1.
グレリン
ストレスホルモンの一種で、主として胃から分泌され視床下部に作用し、接触を刺激します。グレリン投与により、体重、脂肪組織が増大します。
2.
レプチン
脂肪組織から産生され、食欲と代謝の調整のために体脂肪量を脳に伝える役目を持っています。食欲を抑制し、代謝を促す働きがあります。
〈睡眠障害と鬱〉
睡眠が様々な形で妨げられ、細かい目覚めが何度も起きるようになると、交感神経が緊張してきます。
.