2013.10.13 薬師寺 山田法胤管主 法話
奈良薬師寺 山田法胤管主 法話
〈死に方について〉
お釈迦様の教え
「生まれたものは必ず死ぬ」
松下幸之助さんは、死ぬということに強く拒んだ人の一人で、長生きする薬があれば金に糸目をつけないと言われていて、94歳まで生きられたそうです。
彼は、
・自分の家が貧しかったこと
・自分には学歴がなかった(小学校しか出ていない)
・体が生まれつき弱かった
という3つがあったために、松下電器がナショナルという世界的な会社になり、幸せになれたと話したと言います。
それはなぜかと聞くと、学歴が無かったから知らないことがあまりに多くあったため、学者を周りに置いてわからないことは貪欲に聞いて回ったこと。
貧乏だったから貧乏人の気持ちがよく分かり、どうにかそのような人たちに喜んでもらえるような商品をつくりたいということから2股ソケットなどができたこと。
体が弱かったから長生きするために、健康になるためにはどうしたらよいのかということを人一倍考えていて、良い方法があれば片っ端から試されたと言います。
みなさん、死ぬのは嫌かもしれませんが、お釈迦様の教えでは、生者必滅(生まれたものは必ず死ぬ)なのです。
みなさんは病気があるから早く死ぬと考えているかもしれませんが、それは全く関係ありません。
どんなに健康であっても不慮の事故で亡くなる人もいれば、病気を持っていても、しぶとく生きている人もたくさんいます。
長生きするためには、何かしらの目標を持っていなければいけません。
お釈迦様の教えでは、願い心を持っていない者には悪魔がやってくると言っています。
仏教では、目標という言葉は使わずに心の中で願っておくことが大事であり、目的があるから幸せになれるのです。
私は、先日2020年に東京オリンピックの開催が決まった時の映像を見ていて感じたことが、
1億2千万人に一つの目標ができたなと思いました。
私たちは最近目標というものを忘れてしまっているのではないかと思うのです。
多摩大学の学長である寺島実郎さんの話では、最近の大学生は働く意味が分からないとか、なぜ働くのかといった疑問が多く聞かれ、悩んでいると言います。
みなさんは働くということの意味など考える間もなく働かれてきたと思いますが、自分の好きな職業が決まるまではブラブラしているという学生が最近多いそうです。
私は、仕事に好きとか嫌いとかということは考えたこともなかったですけれども、唯一なりたくないと思っていた坊さんに現に今はなっていますから、わからないものです。
〈発見と発明〉
お釈迦様は仏様や神様はものづくりをしません。ものをつくり、発明するのは人間なのです。
その中で、お釈迦様はゾウに例えてゾウとブッダは非常に近いと言っています
ゾウはスリランカに多く、私は先日スリランカにお参りに行きました。
国の大きさは、九州を一回り大きくした程度で、北海道よりは小さいというものです。
そこに3千万くらいが住んでいて、仏教が最初にインドから入ったのはスリランカで、純粋な仏教が浸透しています。
そこから伸びるシルクロードを渡って記録に残したのが玄奘三蔵法師で、それを漫画にしたものが、西遊記です。西と遊ぶという言葉から、みなさん方は遊ぶというと、仕事をせずに怠けているというような悪いイメージがあるかもしれませんが、この言葉は非常に重要でゆとりをもって生きていくことの重要性が込められています。
玄奘三蔵法師は、砂漠の中を歩いて、7000m級の山を越え、氷を布団にして雪を枕にして7日間過ごすという過酷な旅をして峠を越えたと言われています。
ですからシルクロードは、逆から読むとドーロクルシ(道路苦しい)ということで、非常に過酷な環境であったということがうかがい知れます。
そして東西だけでなく、南北からも人の流れができ、文明の十字路としてガンダーラという街が栄え、仏教もより大きな捉え方がされるようになり、大乗仏教がつくられました。
大乗という文字は、大きな乗り物と書き、誰でも乗せてあげる(様々な考え方も包括しており、キリスト教、ゾロアスター教、ユダヤ教なども含まれている)のに対し、小乗仏教はブッダの教えに忠実な仏教と言えます。
比叡山の最澄が一つの乗り物で、幸せになるためにみんなで行こうという一条大乗というものをつくりました、これが最も大きく、どのような人でも乗れるようにしました。
今日の機械文明で、神様や仏様がつくったものは無い。
すべて人間が開発したものである。
ところがその張本人である人間が何者なのかという探究が十二分にされていない。
科学者もブッダから見ると、凡愚(愚か)であり、経済成長、原子力、合理主義、しかし、発明した人間がどのようなものなのか分かっていないために、何でも使ってしまうことで間違った使い方をしてしまう人が現れてしまうのです。
死に支度、いたせいたせと桜かな
小林一茶
一病息災(1つくらい病気があるほうが、健康に留意するからかえって長生きだということ)
ということがあるように、自分に病気があることで死について考えておくことができることはある意味で幸せなのです。
私たちの父、母にもそれぞれ父、母があり、またその父、母がいるように計算してみると、10世代さかのぼると2048人の血が自分たちには入っているといいます。
さらに10世代さかのぼると、億単位になるそうです。
ですから、そういった人たちの中には、とても世の中の役に立った人もいれば、罪を犯した人もいるかもしれません。
世の中には不思議なことが数多く起こります。今まで宝くじに当たるような良いことをしたわけでもないのに3億円当たる人もいれば、いじめに遭ったり、良いことをしていたのに不慮の事故で亡くなってしまうといったことです。
こういったことも長い繋がりで考えていけば、説明がつくのです。
●第2回 『ガンにならない生き方』
●佐藤先生を囲んでの座談会
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