酵素を学ぶ 佐藤義之先生レベルアップ研修
テーマ 『酵素を学ぶ』
@エルクレスト セミナールーム
講師は、日本橋清州クリニック院長、佐藤義之先生です
人間の体内には、約5000種の酵素が存在する。
酵素はたんぱく質でできている触媒で、あらゆる細胞で作られるが、どのように作られるかは厳密にはまだ明らかになっていない。5000種類の酵素のうちのいくつかは、腸内細菌がつくる。
酵素のサイズは、1㎜の100万分の1の1nm単位と非常に小さい物質で、人間の生命活動に欠かすことのできない物質。
細胞の小器官の中で、エネルギーを生み出すミトコンドリアは生命体と定義されているが、酵素は生命体ではなく、物質とされている。
1985年、アメリカのエドワード・ハウエル博士が「酵素栄養学」として確立された。
一つの酵素は、一つの役割しかもっておらず、例えばたんぱく質を分解するという役目を持った酵素は、脂肪は分解しない。
骨髄は、血液をつくる作用を持っているが、血液の成分である白血球、赤血球、血小板、リンパ球を全て作っているわけではなく、それらのどれにも分化する多能性造血幹細胞という1つの細胞がその時の体の状態に応じて、どの成分が必要かを判断して作っている。
〈酵素の種類〉
1.人体にあるもの:潜在酵素
潜在酵素は、どのような酵素にもなりうる酵素で、例えばアルコールをたくさん摂取すれば、アルコールを分解する酵素として分化し、その分、他の消化酵素の産生量は減少する。
・代謝酵素(生命の活動)
栄養素をエネルギーに変えるといった体をつくり、病気を治し、人間のすべての生命活動に必要な酵素
・消化酵素(食物の消化)
食事として摂っている食物は、全て異種タンパクであり、異物である。
したがってこれらを徹底的に分解し、自分たちの体に合うたんぱく質に作り直す必要があり、消化器官内で分泌される消化酵素が、口にした食べ物を消化する。
したがって大食いをすると、消化酵素ばかりがつくられ、代謝酵素が十分に作られずに体調を崩しやすくなる。
2.外部から取り入れるもの
・食物酵素
生の食物に豊富に含まれる酵素で、その食物事態を自己消化する。
例として野菜は、自身を消化する酵素を持っており、生きている間は働かないものの、死んでしまうとその酵素が働き、トロトロに溶けてしまう。
生で野菜を食べれば、消化の際に野菜が持つ消化酵素が働いてくれるため、人体の酵素は少なくて済むが、加熱調理などをして摂取すると、野菜の持つ酵素が失活し、人体は倍の消化酵素を使わなければならない。
一生のうちに作られる潜在酵素の量は決まっており、一日に作られる量も年齢と共に減少するため、酵素を浪費しないようにすることと、生食を心がけて、食物から酵素を摂取する必要がある。
ビタミン、ミネラルは補酵素(Co-enzyme)と呼ばれており、酵素の活動を補助する役割がある。
〈人間に必要な栄養素〉
1. たんぱく質
2. 炭水化物
3. 脂質
4. ビタミン
5. ミネラル
6. 線維
7. 水
8. ファイトケミカル
9. 酵素
〈栄養学の歴史〉
昭和30~40年代は、たんぱく質、脂質、炭水化物の3大栄養素が主体で、トマト、キュウリ、セロリなどは、何ら栄養は無く、ただの水と書かれていた。
その時代が過ぎて、ビタミン、ミネラル、水、線維も重要視されるようになった。
また生野菜は身体を冷やし、線維も十分摂取し難いため、煮たり、蒸したりして摂取することが望ましいとされたが、1985年ごろからはこのことが疑問視されている。
〈消化酵素と代謝酵素の関係〉
代謝酵素とは文字通り、代謝を行うための酵素で、解毒と排泄の行程で必要なたんぱく質のことである。人体にはフェノールなどの有害物質が生じるため、それらは老廃物として排泄しなければならないが、その際に必要となる。
もともと体内で作られる酵素は「潜在酵素」と呼ばれ、消化と代謝の2つの機能を持ち合わせている。
消化酵素を余計に必要とする、または使いすぎれば不足気味となり、消化酵素の浪費が無ければ、代謝酵素は十分に存在することになる。
消化酵素を節約する最善の方法は、食物酵素を十分に摂り、自己の消化酵素をあまり使わないことである。中年以降では、消化酵素が減少しているため、脂肪分の多い食事などを摂るともたれやすくなる。
〈消化のしくみ〉
消化とは、食物の中にある炭水化物、タンパク質、脂質の3大栄養素を小腸から吸収できるような分子レベルのサイズにまで小さく分解する作業のことで、口から入った食物は胃、小腸、大腸へと移動しながら消化、吸収が進む。
そして各臓器から種々の酵素が分泌され、栄養素を小さく分解し、たんぱく質はアミノ酸、脂肪は脂肪酸、炭水化物はブドウ糖となる。
かつては、この過程が完全に行われていたが、現代人はこれが完全に行われていないのが現状である。
また。消化酵素は特定の条件下でなければ働くことができないため、各消化器官から分泌される消化液は、それぞれの消化液に含まれる酵素が活躍できるpHになっている。
胃酸に含まれる消化酵素であるペプシンは、強酸性下で働くために胃液と共に分泌される。
9大栄養素のうち、ビタミン、ミネラル、酵素は分解作業をほとんど必要としないほど微小なものであるため、そのまま吸収される。
〈消化酵素の種類〉
・唾液腺
唾液アミラーゼ(α―アミラーゼ):炭水化物の分解を大まかに行う
・上層胃(噴門部)
アミラーゼ:炭水化物の分解を大まかに行う
・下層胃
リパーゼ:脂肪を柔らかくして分解しやすくする
ペプシン:たんぱく質の分解を大まかに行う
レンニン:乳製品の消化を大まかに行う
・小腸
アミノペプチダーゼ:たんぱく質をポリペプチド(多くのアミノ酸がペプチド結合した化合物)にする
ラクターゼ:乳糖(ラクトース)をブドウ糖とガラクトースにする
ホスファターゼ:脂肪のリン酸塩を柔らかくする
マルターゼ:麦芽糖(マルトース)をブドウ糖にする
スクラーゼ:ショ糖(スクロース)をブドウ糖と果糖にする
・膵臓
アミラーゼ:デンプンを分解してブドウ糖にする
キモトリプシン:ポリペプチドを分解し、アミノ酸にする
リパーゼ:トリグリセリド(中性脂肪)を脂肪酸に分解する
トリプシン:ポリペプチドを分解し、アミノ酸にする
3大栄養素の中で最初に消化が進むのは炭水化物で、口の中で咀嚼する際、唾液の中のα‐アミラーゼで胃の中での消化が進むサイズにまで分解される。
胃の上層部のアミラーゼ、小腸のマルターゼ、フルクターゼなどの消化酵素で最終的にはブドウ糖、果糖になり、体内に吸収される。
たんぱく質は、食物が胃の中に入って初めて分解が始まる。
胃の中のペプシンが大まかに分解し、小腸に入ると、膵臓からの消化酵素と小腸における消化酵素、計約10種類の消化酵素でアミノ酸まで分解される。
脂肪においては、グリセロールに付着した3つの脂肪酸の繋がりを切ることで、はじめて吸収され、その作用は主として膵臓のリパーゼという酵素が行う。
〈現代人の消化過程における3つの問題点〉
1. 食物酵素の失活
酵素は熱に弱く、加熱で失活する。40℃前後から働きが低下し始め、48度から急速に破壊が進み、60℃で失活。加熱した食事が多くなると、その分、食物酵素の摂取は減少し、自らの消化酵素を増やして消化する必要が出てくる。
生野菜が身体を冷やすと言われた時代もあったが、これは間違いで、生野菜を食べている動物がガンになるかというとそのようなことはない。
最も酵素活性が上がる温度は37~45℃である。また、胃液以外の酵素は弱アルカリであり、体は弱アルカリに保つべきである。
2. 消化酵素の浪費(特にたんぱく質)
過食、動物性タンパクの摂取の消化に関わる酵素は10種類以上にもおよび、食べすぎると消化酵素の不足を招きやすい。もちろん代謝酵素の減少にも繋がる。
例えば、代謝酵素が減少すると、乳酸の排泄が低下、血液、組織が酸性に傾く、疲労、筋肉痛の原因になるほか、リンパ球の機能低下が起こり、ガン体質になりやすくなる。
3. 消化不良の産物とその影響(特にたんぱく質)
・アミノ酸分子にならなかった消化不良の破片(窒素残留物)が血中に入ると、微小循環不全(血流の悪化)が起きる。
赤血球がたんぱく質の窒素残留物で結合し、ルローと呼ばれるものが形成される。
末梢の毛細血管居間で血液が届きにくくなることで、血液の粘調度の上昇が起こる。
毛細血管の直径は約4ミクロンであるのに対し、赤血球は7ミクロンであるため、ルロー化して大きくなった赤血球は通ることができない。
・タンパク窒素残留物が腸内に長く停滞すると、腸内悪玉菌の作用で腐敗が慢性化し、有害なガスや物質が発生する。
そのまま有害物質が血中に入ると、アキャントサイトと呼ばれるコンペイトウのようにトゲトゲした赤血球が発生し、各組織における正常な酸素供給ができなくなる。
・たんぱく質窒素残留物が腸管壁に長期に付着すると、腸管透過性が亢進する。
本来、小腸は分子レベルに切り離された栄養素しか吸収できない仕組みになっているが、透過性が亢進して、例えばアミノ酸が100個も連なったタンパク窒素残留物も吸収されることになる。
この時、体はアミノ酸が100個つながったものとは認識せず、本来血液中に存在しない異物と判断するため、確実にアレルギーの原因となる(リッキーガット症候群)。
花粉症やPM2.5、排気ガスなどがアレルギーの原因と言われているが、自分自身でも大きな原因をつくっているのである。
改善策として、タンパク質分解酵素をたくさん含んだ大根、レンコン、ショウガなどをすりおろして食べるとよい。
見直されたたんぱく質の一日当たりの摂取勧告量(アメリカの栄養学会)では、現代の日本人は摂りすぎの傾向がある。
その理由として、人間の体には、アミノ酸プールはごく少量存在するが、たんぱく質の貯蔵庫は無い。
たんぱく質は大変消化に時間がかかり、多くの酵素を消費する。
動、植物にせよ、摂取したたんぱく質が全てアミノ酸に分解されるわけではない。
動物は、具合が悪くなった時は食べずに消化酵素を温存することで、代謝酵素を増やし免疫力を高めている。
農薬は、植物の発育に関わる酵素を阻害するのが役割のため、その農薬が体内に入ることは人体の酵素にも影響を与える。
〈生食を見直す〉
生野菜やフルーツを多めに摂ると体を冷やすというが、生野菜やフルーツを多めに摂った人が全て冷え性になるわけではない。
不思議なことにこれらを多めに摂ることが冷え性軽減につながることがある。
酵素は新鮮な野菜や果物、生肉、刺身などにふんだんに含まれている。
〈人体の生理リズム〉
代謝とは、一言で言えば全身すべての臓器の点検、修理、入れ替え補修の作業で、主として睡眠中に大量生産される。
身体を休ませている時に行うのは、造血も同じで、リンパ球も睡眠中に作られる。
したがって夜更かし、徹夜、昼夜逆転がどのくらい体のメカニズムに大きな悪影響を与える。
また、深夜近くに食事をすると、本来吸収と代謝のための時間帯に消化の作業をしなければならなくなり、本来は生産の必要のない消化酵素を生産することとなり、その分、体h差酵素が減少し、代謝が低下する。
〈胃薬の弊害〉
消化不良が種々の病気の原因となることが判明し、消化酵素は一定の条件のもとに活性を有することも証明されている。
胃には、たんぱく質分解酵素のペプシンがあるが、これは十分な胃酸があって、強酸性の環境下で活性を有するものである。
しかし、テレビコマーシャルで医者まで、胃酸過多を胃の不調の原因として制酸剤の使用が増大している。
しかし原因は、過食、食べてすぐに横になる、吸収代謝時間帯の食事、ストレスなど、自らが作り出した胃酸過多の状況である。
それを改善しようともせず、制酸剤を飲むことで逆に胃酸過小となり、胃のpHが上昇し、元々胃酸の役目である殺菌能力も低下し、腐敗菌が増殖し、炎症が併発する。
胃酸過小とpH上昇のため、ペプシンの消化能力が低下し、体調不良となる。
近年、毎年脅威とされているノロウィルスは、本来ウィルスの中でも最も弱い分類であり、発症した場合は、相当に免疫力が低下していると判断してよい。
●第1回 『ガンにならない生き方』
●第2回 『ガンにならない生き方』
●佐藤先生を囲んでの座談会