質の良い睡眠のためのメディカルハーブ研修
定期レベルアップ研修
2013.1.9.(金) 11:00~13:00
@エルクレスト代々木公園店 セミナールーム
[講師] 渡邉肇子先生 (薬剤師・NPO日本メディカルハーブ協会理事)
『冬を元気に過ごすために』
・冬とインフルエンザ
冬の乾燥している時は、小さくて軽いウィルスが舞い上がりやすいため感染しやすい。
夏は気温が高いことから、例えば30度の日であれば36度の体温を保つために6度の発熱で済むものが、冬の0度の時では36度の発熱量が必要となることから代謝(エネルギー消費)は高まる。昔の人は、日が沈んだら寝て、日が昇ったら起きるという習慣を持っていたが、冬は日照時間も短いことから、多くの睡眠をとることになり、エネルギー消費が多く疲労しやすい冬の生活に対して理に適っていた。
〈睡眠と不眠〉
睡眠の目的は体を休めるだけでなく、活動エネルギーの4分の1を消費する脳を休めることが非常に重要である。
睡眠時、脳は起きている時に入ってきた様々な情報を整理整頓し、必要なものと不必要なものを振り分けるという作業をしている。
ヒトには地球の自転に基づくリズム(概日リズム、サーカディアンリズム)がある。
目に太陽の光が入ってくることでリセットされるが、完全な暗所では、ヒトは25時間で1つのサイクルで睡眠と起床を繰り返す。
正しい睡眠は脳、心臓疾患などの生活習慣病のリスクを減らしたり、ストレス、疲労の回復を促す。
睡眠前には、夕食後に飲食やカフェインが入ったものの摂取や強い光刺激を控え、眠りに必要な快適な環境を整えることが有効である。
また入眠を促すものとしてストレッチや軽い読書などがある。
朝の眠気を抑えることためには、光刺激を体に与えることが有効で、日光が当たるところで朝食を食べる、通勤の際に日光を浴びるように心がけるといったことが有効である。
昼の眠気には、15分から30分の昼寝、昼食を摂りすぎないようにすると良い。
・睡眠の定義
以前の睡眠の定義は起きていない状態という抽象的なものだったが、現在は脳波などの情報から睡眠にもいくつかの種類があることが明らかになった。
① レム睡眠:レム睡眠時は起きている時の脳波に近い状態になり、眼球が小刻みに動いており、夢をみることもある。
② ノンレム睡眠:脳の活動は低下し、睡眠の深さを示す4段階のレベルがある。
健康であれば、活動で疲労物質である乳酸が蓄積することが刺激となって眠気が起こる。
・入眠の条件
① 体温の低下:入眠は体温が低下することによって起こるため、入浴は就寝の1~1時間半前に済ませ、ある程度体温が下がってから布団に入ることが理想である。
② 周辺環境:睡眠中は無意識状態となるため、安全で安心(ストレス、暗所、騒音が無い状態)な環境が整っている必要がある。
入眠後、ノンレム睡眠の4段階に従って眠りが深くなるとレム睡眠が起こり、その後再びノンレム睡眠に入るというものが約90分あり、これを1サイクルとしている。
・不眠
① 入眠障害:眠るまでに1時間以上かかってしまうもの。
優性遺伝であるムズムズ足症候群による神経の問題も関係しており、足が勝手に動いてしまう、動かさないと居られないといった症状がある。
ビタミンBと鉄剤の投与が有効である。
入眠を促す薬としては、ハルシオン、ベンゾジアゼピンが主流で、アメリカでは睡眠ホルモンであるメラトニンがサプリメントとして売られている。
② 睡眠時無呼吸症候群:睡眠中の強いいびきと無呼吸状態が繰り返される病気で、日中の強い眠気を特徴としており、罹患している場合は10年間に心臓や脳の疾患にかかる割合が通常の4倍になると言われている。
③ 熟眠障害:飲酒や睡眠時無呼吸症候群によって睡眠の質が低下する。
④ 多夢:いくつも夢を見て寝た気がしない。
⑤ 早期覚醒:もっと寝ていたいのに早く目覚めてしまうもので、加齢で起こりやすくなる。
⑥ 回復感の欠如:眠りの満足度の欠如(主観的なもの)
以前は上記の症状が出ている状態を不眠と呼んでいたが、2006年からはこれらの症状によって日中の活動に支障が出る状態を不眠と定義するようになっている。
したがって不眠の治療は、これらの症状を改善するというよりもライフスタイルの改善、食事、サプリメント、ハーブなどを用いて眠りの質を上げて、日中の活動が正常に行える状態になることを目的としている。
・睡眠を改善するハーブ
ハーブは成分だけでなく、香りにもリラックスさせる作用があるために睡眠の改善に有効である。
① セントジョーンズワート:うつ、不眠、不安に最もよく使われている
軽度から中程度のうつ患者に対して、抗うつ薬とセントジョーンズワートのどちらが有効性が高いかを実験したところ、ほぼ同等の改善度が見られたという。
また摂取を途中でやめた人の割合は、セントジョーンズワートの方が少なかったというデータが出た。リンデン、ジャーマンカモミールなどとブレンドすることも有効。
② オレンジフラワー
〈皮膚の科学〉
・皮膚の働き
体の中で一番大きな器官で、表面積は畳2畳分になると言われている。
① 外界との境
表皮、真皮(汗腺、体毛)、皮下組織の3層からなり、真皮の構成成分としては以下のものがある。
コラーゲン:膠原繊維と呼ばれる網目状の線維で、組織の構造をつくっており、伸びる、縮むといった動きに変形して対応する。
エラスチン:コラーゲンの網目の交点に存在し、弾性に富む物質である。
ヒアルロン酸:多糖類の一種で水分の保持に役立っており、皮膚や関節をなめらかにする役割がある。
基底層で表皮の細胞がつくられた後、有棘層、顆粒層、淡明層、角質層へと4週間かけて上がっていき、角質層に来た時には、死骸となっており、垢として剥がれ落ちていく。
② 生体の防御
紫外線:波長の短い紫外線をUVと言い、紫外線量は緯度の低い地域の方が多く、沖縄の一日の量が北海道の2倍になっており、標高も300m高くなるごとに4%増加する。
5~7月の正午が最も多く、冬は雪の上では85~88%が反射し、水面は20%、海面では15%が反射する。UV-A、UV-B、UV-Cの3種類があり、皮膚に直接重要なのはUV-AとUV-Bである。
③ 感覚器
触覚、圧覚、温覚、冷覚、痛覚の5つの感覚器を持つ
・紫外線とメディカルハーブ
① 抗酸化作用
② 皮脂の分泌を抑える
③ リラックスによる新陳代謝の促進
④ 血行の促進
美容に有効なハーブとしてハイビスカスがあり、アントシアニン(ヒビスシン)、リンゴ酸、ハイビスカス酸を含む。
またヒースは美白効果のあるアルブチンを含んでいる。