レベルアップ研修
2012.10.19.(金) 11:00~13:00
『冬を元気に過ごすためのメディカルハーブの基礎知識』
@エルクレスト代々木公園店 セミナールーム
講師 渡邉肇子先生 (薬剤師・NPO日本メディカルハーブ協会 理事)
◆メディカルハーブとは
ハーブとはヒトの生活に立つ植物の総称で、日本語では「薬草」や「香草」と訳され、日常生活で大きく分けて8つの分野で活用されている。
①
食品(約40年前に海外で料理を学んだ人が持ち込んだのが最初)
②
飲み物(リキュールの色付けなどにも使われている)
③
健康(メディカルハーブ)
④
化粧品
⑤
香料(揮発性の高いものを集めた精油がアロマセラピーとして使われるが、肌に使う場合は濃縮されているため、希釈して使う)
⑥
染物
⑦
栽培(趣味、園芸療法)
⑧
祭祀
③のようにハーブを健康の維持、増進や美容の分野に利用するもの、ある種の機能を有する植物性食品を含んだものをメディカルハーブ(英語ではメディスィナルハーブ)と言う。
ただし、日本では薬品としては認められていない。
◆医学の歴史
三大伝統医学(現在でも植物を使った療法が行われている)
①
3500年前、アーユルヴェーダ(インド)
②
3000年前、中医学(中国)
③
10世紀ごろ、ユナニ医学(アラビア)
その後、1492年の新大陸発見などの人類の移動や交流によって様々な技術や知識が交換されるようになり、約200年前に今の形の医薬品が作られるようになる。
今までは頭痛の時には、柳の木をかじっており、その皮には多くの化学成分が含まれているが、それらがすべて鎮痛に関わっているわけではないということが分かり、必要な成分だけを抽出できるようになり、さらに技術が発展し、工場や研究施設などで、他の物からその成分を作り出す技術が発展し、現在の医薬品となった。
1928年には、感染症の原因である微生物に対する薬として初めて抗生物質であるペニシリンが発見され、感染症で亡くなる人の数は激減した。
しかし、病人全体の数は変わらず、20世紀半ばまでは伝染病、感染症といった人に移る病気が主流だったのに対して、それ以降は心身症や生活習慣病といった日常から作られる病気へとシフトするようになった。
そのため、日々のライフスタイルを考える必要があることが分かり、1990年から統合医療という考え方が生まれた。西洋医学では科学的にこの薬を用いると何%の人が治るかという統計をとるという手法だが、代替医療(伝統医療などを含む)では、長い歴史の中で積み上げられた経験に基づいて、それぞれの人の体力、性格、体格などに合わせて使い分けていくという特徴がある。
西洋医学は重度の外傷や原因が明確なものに対して非常に有効で、統合医療は心身症や生活習慣病などの予防といった様々な要素が複雑に絡んでいる状態に対して有効である。
◆植物化学成分(花や根に含まれる)
①
アルカロイド:強い苦味があり、中枢性に働くため作用が強く、薬の成分として使われることもある。代表的なものとしてカフェインがある。
② タンニン:渋みが強く、ローズなどに含まれる。引き締め作用や抗炎症作用、下痢止め作用が有り、化粧品や薬の成分としても使われる。
③配糖体:糖とその他の成分が結合したもので、水に入ると切り離され、様々な作用を発揮するもので、心臓が弱っているとき、下剤などの成分として薬品に使われているものもある。
④
サポニン:語源はシャボンで水に入れると泡が出るというもので、風邪薬や咳止め薬として使われる他、ホルモン様作用を持つことから更年期の症状に良いとされている。
⑤
苦味質:苦味があり食欲不振などに対して胃や腸の働きを整える作用がある。
⑥
粘液質:粘液質は保湿作用があり、喉の乾燥やバスハーブとしても用いられる。
⑦
フラボノイド:アイボリーや薄黄緑色の色を持ち、多くの種類があり、そばに含まれるルチンは毛細血管の働きを高めるという作用があり、またビタミンCとの相性が良く、双方の働きを高める。そのほか利尿作用、下剤の作用、腹痛に有効なものなど多岐にわたる。
⑧
ビタミン、ミネラル:タンパク質などの吸収、活用を助ける。
◆メディカルハーブの共通作用
①
抗酸化作用:植物は根を下ろしているため、常に紫外線などの酸化要因にさらされているため、それから身を守るために強い抗酸化物質を作り出している
②
利尿、発汗、消化:代謝を促進することでこれらの作用を示す
③
抗菌作用:病原微生物(細菌、カビ、ウィルス)の中で、薬が効きづらいものに対しても一定の作用がある
④
栄養素の補給:ビタミン、ミネラル、種には脂肪も含まれている
⑤
薬理作用
◆フィトケミカル
植物の含まれる化学成分の総称で、野菜や穀類、果物、などの色素、渋み、香り、辛味、灰汁などの成分で、多くは高い抗酸化力を持っており、
ポリフェノール、カテキン、リコピンなどがある。
各種フィトケミカルの機能性の研究は現在も行われており、ガンを予防する植物エストロゲンなどが発見されている。
◆フィトケミカルの共通作用
①
生体防御作用:アダプトゲン作用(免疫、内分泌調整作用)による心身症の予防
②
抗酸化作用:SOD(スーパーオキサイドディスムターゼ)様作用、代謝促進作用による生活習慣病の予防
・サプリメントの種類
①
ベースサプリメント:ビタミン、ミネラル、アミノ酸、乳酸菌など栄養の欠損を補充するもの
②
ヘルスサプリメント:大豆、高麗人参、ビール酵母など健康の維持や増進作用があるもの
③
オプショナルサプリメント:不調のケアや改善やダイエットの際に用いられるものでハーブなどが挙げられる
◆食品の機能
①
一次機能(栄養機能、エネルギー源):生命維持のための栄養面でのはたらきを指す
②
二次機能(おいしさ):食事を楽しむという味覚、感覚面でのはたらき
③
三次機能(体調調節):整体の生理機能の変調を修復するはたらき
・ハーブティーの淹れ方
①
ティーポットでいれる:ティーポットに細かくした規定量のドライハーブを入れ、熱湯を注ぎ、蓋をして抽出し、茶こしを使ってカップに注ぐ
②
鍋でいれる:鍋に規定量の水を入れ沸騰させ、火を止めてから細かくした規定量のドライハーブを入れ、蓋をして抽出する
◆東洋医学での冬
東洋医学では、冬は立冬から始まり小雪、大雪、冬至、小寒、大寒を経て立春までの三ヶ月を言い、さらにこの三ヶ月は閉蔵と呼ばれる。
この時の過ごし方として、環境の変化に体を合わせていくことが健康で生活するために必要である。
素問・四気調神大論では、「人は陽を乱さないように早寝し、必ず日光を待ってから起きる。
志を内に潜ませて隠れるようにし、私心があっても抑えるかのように気持ちを出さないような精神状態にさせる。寒を避け、暖をとり、皮膚を外に現さず、気を外に逃さないようにする。これは冬の気に応じて蔵を養う方法である。これに逆らうと腎が損なわれ、春になると手足が冷えて萎えやすくなり、春の生を体に受けることが少なくなる。」と述べている。
◆冬の養生
冬の養生の原則は腎気(生命エネルギーが溜めているところ)を衰えさせないように注意すると共に寒さから身を守ることが重要である。
①
寒さから身を守る:脳や心臓の血管障害が起こりやすいため、血管に負担がかからないように部屋などを温めておく
②
腎の働きを助ける:冬は日照時間が短く、陰が強い季節のため、エネルギーを溜めることを心がける必要があり、それがうまくできなければ頻尿や膀胱炎といった症状が起きてくる
③
腎を保養する:根菜類(人参、大根、レンコン)を多めに摂るように心がける
◆冬の過ごし方
①
睡眠時間をたっぷりと取る
②
暖房が強すぎると、汗をかくとともに溜めていた気を消耗する
③
エネルギーを蓄える季節のため無理なダイエットは避ける
④
特に首、足首、腰を冷やさないようにする
⑤
消耗の強い運動は控える
⑥
鍋やスープなどの温まる食事を心がける
⑦
風邪の流行る季節のため、柑橘類などからビタミンCを多めに摂る
・冷え性とは
西洋医学では「冷え性」という病名はなく、何かの病気がありその影響で冷えが起きている場合には、原因となっている病気のち用を優先し、冷えそのものの治療はあまり行われていない。
また、冷たく感じることが冷え性ではなく、冷えを自覚していない人も多く、これが一番の問題である。そのため、直接肌を触って皮膚の温度がどうかを確かめ、冷えがあることを自覚してもらうことが重要である。
冷え性は特別な病気が無いにも関わらず、手や脚が冷えるもので、はっきりした病気ではないため西洋医学では適切な対応ができない。
◆冷えは万病の元
女性に多く見られる冷え性には、腰からしたが冷たい、手足の指先が冷たい、顔はのぼせているのに足が冷たいなどの感覚があり、それに伴って頭痛、肩こり、腰痛、風邪、神経痛、さらに月経痛、月経不順など様々な症状の現れた方がある。
さらに冬になると、暖房によって温められた空気が天井に集まって床が冷え、室内が寒い状態になりやすいことも考える必要がある。
◆冷えの原因
冷えの原因はストレスや自律神経の乱れによって全身の血行循環が悪くなり、身体の上下の温度差を調整できなくなった結果の症状と考えられており、血行を改善することを優先する。
◆冷えによく用いられるハーブ
①
ジャーマンカモミール
②
エルダーフラワー
③
リンデン
④
イチョウ
⑤
ターメリック
①
~③のハーブはフラボノイドを多く含み、毛細血管への血流を高め、体を温める、発汗を促すといった作用がある。
イチョウは脳の機能を高め、記憶力の改善に効果があるとされており、アメリカではきちんとした製造過程でつくられたものは医薬品としてアルツハイマーの治療などに用いられている。
これらのハーブは飲むだけでなく、サプリメントや足浴として使うこともリラックス効果もあり、有効である。
◆風邪症候群とは
風邪は一年を通して最も罹りやすい病気であり、日本人は年間で平均6回懸かると言われている。
症状は鼻、喉、気管、気管支、肺などの呼吸器とその周辺の炎症で始まり、これが原因で鼻の乾き、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどが起こる。
炎症が広がると喉の激しい痛み、咳、痰などが出て、こじらすと呼吸器系全体に炎症が広がり、発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、下痢、吐き気、腹痛、全身倦怠感などの症状が起こる。
原因となる病原微生物の80~90%はウィルス(ライノウィルスが最も多く、その次にコロナウィルス)で、飛沫感染により広がり、疲労やストレスの蓄積、睡眠不足、他の病気による抵抗力の低下、不規則でバランスの悪い食事、喫煙習慣、寒さや乾燥などの誘発因子があると発症しやすくなる。
治療は薬による対症療法が中心で、安静、保温、栄養を心がけ、栄養としてはビタミンB1、B2、Cを水分とともに補給することが大切である。
◆インフルエンザについて
冬から春先にかけて起こりやすく、38度以上の発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、関節痛、全身倦怠感が急激に現れる。
薬物療法はノイラミニダーゼ阻害薬があり、吸入薬としてザナミビル、ラミナニビルオクタン、経口薬としてリン酸オセルタミビル、アマンダジン、点滴薬としてペラミビル水和物がある。
インフルエンザとヒトの関わりは古く、古代エジプトには既にインフルエンザとみられる病気の記録が残っており、1918年から1919年にかけて発生したスペイン風邪の世界的大流行(パンデミック)では、感染者は6億人、死者は2000万から4000万人、日本では38万人と言われている。
ウィルスに接触することがそのままインフルエンザ感染ではなく、免疫力の程度によって罹る人もいれば罹らない人もいるため、普段から免疫力を高める努力が必要である。
◆風邪やインフルエンザに対して日常できる予防
①
体調を整える:休養と栄養を十分に取り、体調を整えて抵抗力をつける。人ごみを避けるなどウィルスに接触しないことも心がける
②
適度な温度、湿度を保つ:ウィルスは低温、低湿を好み、乾燥しているとウィルスが長時間空気中を漂うため、加湿器などで部屋の適度な湿度を保つ必要がある
③
外出後の手洗いとうがいの励行:手洗いは接触による感染、うがいは喉の感想を防ぐ
④
マスクを着用する:ハイリスク群など予防が必要な方はマスク着用し、罹患した人では咳やくしゃみの飛沫から他人に感染するのを防ぐ効果もある。
◆風邪によく用いられるハーブ
①
予防:エキナセア
②
風邪のひきはじめ:エルダーフラワー
③
咳、喉の痛み:タイム、セージ、マシュマロー、マローブルー
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