2011.4.27.(水) 11:00~13:00
定期レベルアップ研修
『睡眠と免疫』
@エルクレスト代々木公園店 セミナールーム
講師は、日本橋清州クリニック院長、佐藤義之先生です
[睡眠全般]
●ショートスリーパー、ロングスリーパーいろいろなことが言われますが、
統計的には、最も長生きするのは7時間睡眠。
※男女共に死亡率が一番低い。
●寝すぎは死亡率を高める。
・平均睡眠時間8時間の人......死亡率15%増加
・平均睡眠時間9時間の人......死亡率20%増加
・平均睡眠時間9.5時間の人......死亡率30~40%増加
●朝型の人...寝起きが良い
・早起きしているから早く眠くなる。
・メラトニンの分泌が良い。(質の良い睡眠)
●夜型の人...夜眠くならない
・夜起きているということは人工照明をつけている時間が長い。
・メラトニンの分泌が悪い。(質の悪い睡眠)
・眠りが浅くなるので、寝起きが悪い。
[メラトニンについて]
●成長ホルモンとメラトニンは、夜間にしか分泌されない。
●メラトニンは、リンパ球に対する影響力が強い。
●メラトニンの分泌量の多い、少ないが睡眠の質を決定する。
●週3日以上の深夜勤務者は、乳がんの発症リスクが日勤のみの人と比べると2倍である。
●深夜勤務者は、日勤のみの男性と比べると前立腺がんの発症リスクは、3.5倍である。
●メラトニンは、眠りを誘うホルモンであり、脈拍、体温、血圧を低下させることで睡眠と覚醒のリズムを調整している。
●時差ボケの予防薬や海外ではサプリメントもある。
●メラトニンは脳の松果体から分泌され、網膜から受け取る光量により分泌量を決定する。
●メラトニンは、朝日を浴びてから15時間後に分泌される。
●昼間は分泌されず、日没を感知して分泌量が増え、午前2時から3時にピークを迎える。
●その後、4時以降は分泌されず、血中のメラトニン量の減少と共に覚醒する。
●70才を超えると、夜間のメラトニン分泌量も減り、日中と変わらない量になってくる。
●老人は朝が早く、夜中に何度も目が覚めるのは、メラトニンの不足が原因している。
●週末の寝だめや2度寝もメラトニン本来の分泌リズムを崩す
[睡眠の種類]
●深い眠りのノンレム睡眠と浅い眠りのレム睡眠がある。
●眠りは、まずノンレム睡眠から始まり、1時間半から2時間続く。
●レム睡眠は、ノンレム睡眠に続く浅い眠りで10分~30分続く。
●レム睡眠中に起きると目覚めがよく、ノンレム睡眠中に起きると目覚めが悪い。
[眠気のきっかけ]
●疲れると眠くなる(疲労物質、体液組織の酸性化)
●夜になると眠くなる(光の関係、メラトニン分泌)
●体温(深部)が下がると眠くなる(自律神経支配)
[冷え症の人が寝つきが悪い理由]
●眠りのきっかけとなる深部体温の低下がうまくいかないのが冷え症の人。
●冷え症の人は体温を放出する皮膚の末梢血管が収縮したままで、眠りに入るための体温低下がうまくいかず寝付けない。
●寝る前の足浴、湯たんぽが良い。
[会社帰りのスポーツジム]
●交感神経優位、体温上昇から考える誘眠と反対のメカニズムである。
・夜7時までならお勧め。
[夜遅い食事]
●食事をすると深部体温が上昇し、眠気のきっかけと逆のメカニズムになる。
●夕食は、就寝前、3時間半前にすませると良い。
[夜更かしと肥満]
●成長ホルモンとグレリンとレプチンが関係する。
●成長ホルモン
・寝ている間の代謝と解毒を行うための情報伝達物質。
・15歳でピークを迎え、20歳で半減する。
・第1回目のノンレム睡眠時に一番多く分泌される。
・午前3時以降は、どんなに長く眠っても分泌されることはない。
・眠りについた最初の2時間が万病を防ぐと言われる由縁である。
・脂肪を分解する働きがある。
・若いころは、いくら食べても太らなかったのに、年齢と共に食べ過ぎなくても脂肪が落ちづらくなる。
●グレリン
・ストレスホルモンの1種、主として胃から分泌される。
・視床下部に作用し、食欲を増す。
・グレリン投与により体重、脂肪組織の増大。
・レプチンに拮抗するホルモン。
●レプチン
・脂肪組織から分泌される。
・食欲と代謝の調整のために体脂肪量を脳に伝える役目を持つ。
・食欲を抑制し、代謝を促す働きを持つ。
●夜更かしをして睡眠が短くなると...
・成長ホルモンの分泌量が低下する。
●睡眠が4時間になると...
・グレリンが28%も増加し、太りやすくなる。
・レプチンが18%も減少し、痩せづらくなる。
●夜更かし寝不足は、糖尿病、高脂血症、動脈硬化のリスクファクターである。
[早起きは3文の徳]
●トーマス・モア云く
・夜8時に寝て、4時に起きるが理想
●北条早雲云く
・夜8時に寝て、4時起きが全てに勝る
[総括]
ある睡眠学者が、現代の睡眠環境の問題点を「エジソンの呪い」と称している。
文明が発達し、電灯が発明され、夜でも明るい環境を我々は手に入れた。
眠る時間を削ってまで行動することは一見時間を有効に使っているように思えるが、果たしてそうであろうか?遮光カーテンも発明し、朝の徐々に目覚めるプロセスも無視された。テレビに携帯、更にグローバルスタンダードを目指した経済活動で眠らない地球となった。
過去に見た一つの画像を思い出した。それは、ある宇宙飛行士が地上に送った夜の日本を撮影した写真である。なんと日本だけが眩しいくらい輝いていた。もちろん日本中の照明の明るさであり、そこに眠らない日本を見た。
昭和30年代の平均睡眠時間と比べて現代は、一日につき2時間を超えて短縮したという報告もある。
もちろん文明の恩恵は大きい。我々は最大の快適と利便性を手に入れた。しかしものには必ず光と影がある。影の部分には常に気づきをもって接していくべきである。
本来は、あえて睡眠についてもここまで細かくお話しする必要もないのかもしれない。
文明は文明、科学は科学、それに委任し過ぎない生き方を考えてみても良いのではないか。
日本橋清州クリニック 院長 佐藤義之
日本橋清州クリニックのホームページはこちら
中込の職場です