しばらく経ったある日、その患者さんが再び診察に見えました。時期からするとガンもかなり進行し、深刻な症状が出ているはずですが、一見その様な様子も見られません。それだけでなく大変元気そうに見えます。腹水もなく、腫瘍マーカーも正常域で推移していました。
「ありえない!」…なんとあれだけはっきりと影を落としていた卵巣ガンの影がすっかり消えていたのです。さらに腹膜に転移していたガンが進行した様子もなく、それは西洋医学の考えからはまことに信じ難いことでした。
しかし事実なのだから、考え方を改めてみなければなりません。これはまたお天道様が「人間はとてつもない、素晴らしい機能を持っている」ということを教えてくれたのだと思いました。まさにこの患者さんとの出会いは運命的でした。私の医者としての考え方がすっかり変わってしまいました。
後日、この患者さんが、妹さんに勧められて「ヒメマツタケ」というキノコから作られた健康食品を摂取していたことを知りました。私はこのヒメマツタケについて調べ、人が本来持つ「免疫力」を引き出す大きな力を知ることになりました。
この患者さんはその後、亡くなられる平成12年までの16年間、普通の生活を送っておられ、亡くなった原因はもちろん卵巣ガンではありません。
このような経験を経て、私は、まず人間の持っている素晴らしい機能、メカニズムを知ろう。そしてそれを維持するにはどうするべきか学ぼうと決めました。そして研究の中で、特に内科・「免疫」の勉強をすることとなりました。免疫を勉強すればするほど、体全体のつながり、各臓器の連携や関係が鮮明となってきました。
私はあの患者さんに心から感謝しています。あの出会いが、医療に対する私の考え方を変えたのです。