佐藤先生とヒメマツタケの出会い

1.ガン克服のカギを握るのは、ヒトが本来持っている免疫力

大切なのは「治すのだ」「治るのだ」という意識
今回のセミナーでお話してきたように、免疫力を向上させることこそが、ガン克服の重要なカギとなることがわかっていただけたと思います。
私は当クリニックにお見えになる患者さん、またそのご家族の方に、まずはこの人間に本来備わっている抵抗力のメカニズム=免疫をわかりやすく説明し、患者さん自身に「治すのだ」「治るのだ」という意欲、意識を持っていただくところから治療をスタートさせています。もちろん、生活習慣の見直しもお願いしています。治療では西洋医療と並行して代替医療も積極的に取り入れ、とくにガンについては「ヒメマツタケ」の摂取をお勧めしています。

2.運命的な出会い

三期の卵巣ガンが消えた―25年前の運命的な出会い
それは昭和54年(1984年)のことでした。当時、私はカトリック系の大きな病院に勤務し、様々な患者さんの診察に多忙な日々を過ごしていました。そこで、ある末期の卵巣ガンの患者さん(56歳)を診察したのです。ガンはステージ三期、病巣は小児頭大ほどで、腸管の通過障害の前兆も見られるなど深刻な状態にありました。
その後、手術により主病巣は摘出できたものの、ガンはすでに腹膜にも転移していました。腹水もかなりたまってお腹はパンパンに腫れ、余命は時間の問題との判断から、その患者さんには、上司である部長とともに「余命3~6ヶ月」と宣告しました。
勤務していた病院はカトリック系であったこともあり、ガンの告知も早くから行われ、また末期ガンの患者さんには積極的な抗ガン剤を使用した治療は行いませんでした。

しばらく経ったある日、その患者さんが再び診察に見えました。時期からするとガンもかなり進行し、深刻な症状が出ているはずですが、一見その様な様子も見られません。それだけでなく大変元気そうに見えます。腹水もなく、腫瘍マーカーも正常域で推移していました。
「ありえない!」…なんとあれだけはっきりと影を落としていた卵巣ガンの影がすっかり消えていたのです。さらに腹膜に転移していたガンが進行した様子もなく、それは西洋医学の考えからはまことに信じ難いことでした。
しかし事実なのだから、考え方を改めてみなければなりません。これはまたお天道様が「人間はとてつもない、素晴らしい機能を持っている」ということを教えてくれたのだと思いました。まさにこの患者さんとの出会いは運命的でした。私の医者としての考え方がすっかり変わってしまいました。

後日、この患者さんが、妹さんに勧められて「ヒメマツタケ」というキノコから作られた健康食品を摂取していたことを知りました。私はこのヒメマツタケについて調べ、人が本来持つ「免疫力」を引き出す大きな力を知ることになりました。
この患者さんはその後、亡くなられる平成12年までの16年間、普通の生活を送っておられ、亡くなった原因はもちろん卵巣ガンではありません。
このような経験を経て、私は、まず人間の持っている素晴らしい機能、メカニズムを知ろう。そしてそれを維持するにはどうするべきか学ぼうと決めました。そして研究の中で、特に内科・「免疫」の勉強をすることとなりました。免疫を勉強すればするほど、体全体のつながり、各臓器の連携や関係が鮮明となってきました。
私はあの患者さんに心から感謝しています。あの出会いが、医療に対する私の考え方を変えたのです。

3.三重大学等の研究で科学的に裏づけられたヒメマツタケの力

ヒメマツタケのたんぱく・多糖複合体が抗腫瘍性を持つ
「ヒメマツタケ」は「ハラタケ科ハラタケ族ハラタケ属」に分類される約200種のキノコの中の1種です。このキノコの力が学会ではじめて報告されたのは、昭和55年(1980年)にことです。第53回日本細菌学会総会で、国立三重大学医学部により『抗腫瘍性多糖の研究』と題する研究発表が行われ、ここでヒメマツタケに含まれる高分子のたんぱく・多糖複合体が抗腫瘍性を持つことが明らかにされたのです。その後も、三重大学では一貫してヒメマツタケの薬理活性についての研究が続けられてきたほか、静岡大学、日本大学、神戸大学などからも多くの論文が発表されています。
これらの研究でわかってきたのは、ヒメマツタケが人の免疫系に働きかけ、免疫力を高めて生理活性を上げ、ガンと闘う力を付与してくれるということです。正に、私が25年前に経験したことが裏づけられていたわけです。

4.「ヒメマツタケ」のどれもが同じ薬理効果を持つわけではない

販売のされ方に問題が多い現状
私たちが「健康食品」なるものにむやみに頼る時代となって久しいといえます。人は、なぜこうも健康食品に頼るのでしょうか?本来は食生活および日頃の運動等の生活習慣にそこそこの気配りをすれば、健康食品の必要性はないと思われます。
しかし利便性と欲求主導の社会において、文明・文化の変化は確実に健康に影を落としています。その中で人間本来のすばらしい機能を維持していく努力は、正に「業」(修行)だといわなくてはなりません。「業」となるとそれなりに辛いもので、ストレスになることも多いものです。自らの努力を補完する意味で、健康食品の利用も一考であるのかもしれません。
ただ、その健康食品の販売のされ方が問題となるケースが多いの困ったことです。何よりも、消費者(購入者)がその製品の内容、エビデンス(学会等における発表等)を詳細に知り、納得するすべがないのが問題です。ヒメマツタケについても、この事情は同様で、この点について私は警鐘を鳴らし、啓蒙啓発活動の必要性を説きたいと思います。
「アガリクス」という固有名詞のキノコは存在しない
現在流通している健康食品に「アガリクス茸」という商品があります。ガンに効果のある「キノコ」として、一時は大いに脚光を浴びていましたから、名前を聞いたことがおありの方も多いでしょう。
正しい知識の最初に記しておきたいことは「アガリクス茸という固有名詞を持つキノコは存在しない」ということです。キノコは大きく「ハラタケ科」「サルノコシカケ科」「シメジ科」などに分類されますが、「アガリクス」は「ハラタケ科」の中の「ハラタケ族ハラタケ属」全体を指す総称です。
この中には約200種類ものいろいろなキノコが含まれ、ヒメマツタケはその中の1種です。また、皆さんがよくご存知のマッシュルームもこの仲間です。すなわち、「アガリクス」は単一のキノコを指す名称ではないということです。ですから、「アガリクス」「アガリクス」といっても「アガリクス属」の中の何というキノコであるかが重要なポイントなのです。
「アガリクスならすべて薬理効果がある」は間違い
キノコは菌種が違えば組成・薬理効果が異なるのは常識です。世にいわれている「アガリクス」という表現は、菌種をゴチャ混ぜにしている点で「犬」という表現と同じです。犬の中には、スピッツもいればシェパードもいるし、チワワもいるのです。
今、「ヒメマツタケ」という、アガリクス属の中の1つのキノコが持っているいろいろな「薬理効果」を、犬における「警察犬になる能力」に置きかえてみましょう。警察犬になる能力はシェパードがいちばん優れています。ところが現状は、シェパードのデータをチワワに添付して、「これも同じ犬だから」と販売するようなことが起きているから問題なのです。アガリクス属のすべてのキノコに薬理効果があるわけではありません。
ただ、シェパードとチワワなら見分けがつきますが、キノコの見分けは大変難しく、まして乾燥させたり粉末や顆粒、液体となると、元がどんなキノコであったのかを見分けるのはほとんど不可能です。

5.重要なのは学会発表と同じ種菌、栽培方法かどうか

同じ「ヒメマツタケ」でも栽培方法で薬理効果は異なる
では、同じ「ヒメマツタケ」ならどれでも同様の薬理効果があるのでしょうか。これも、まったく違います。新聞紙上でも著名な免疫学者が、「栽培方法が違うと組成・薬理効果が違う」ことを言明しています。(産経新聞・平成18年7月31日号他)。
植物はすべて根から養分をはじめ様々なものを吸い上げます。苗床を替えれば吸い上げるものも当然違ってきます。特にキノコは重金属や放射能を吸い上げやすいといわれています。外国産のキノコにはどんな農薬が使われているとも知れず、高濃度の農薬が残留していないとも限らないことは、以前アガリクスの特集を組んだ雑誌『新潮45』でも取り上げられたとおりです。
さきほど、「アガリクス」を「犬」にたとえ、「薬理効果」を「警察犬になる能力」に置き換えて考えましたが、ではシェパードであればすべて警察犬になれる能力があるのかといえば、決してそうでないことはおわかりでしょう。ヒメマツタケは菌種(種菌)ももちろん重要ですが、栽培方法がさらに重要な要因であることは、シェパードをどのように教育したかに置きかえることで理解できます。チワワとシェパードの違いは見分けはついたとしても、シェパードを見ただけでどのような教育を受けたかは、識別不可能です。同様に、ヒメマツタケを見てどのように栽培管理されたかを識別することは全く不可能といっていいでしょう。
「当社のアガリクスは品質管理に万全を期しており、安心してご愛用いただけます」等の表示がしてある商品もみかけますが、国が品質管理を保証しているわけでもなく、消費者がその詳細を知るすべはないのです。
栽培方法、品質管理に厳密な言及があるか
さきほど、三重大学医学部、薬理学部が20年以上にわたってヒメマツタケを研究し、その薬理効果を学会や学会誌などで証明・発表していることを紹介しました。これからもわかるとおり、ヒメマツタケの薬理効果については確たる科学的裏づけがあることは確かなのですが、問題は、現在販売されているヒメマツタケが、学会や学会誌で発表されたヒメマツタケと同じ種菌で、しかも同じ栽培方法を用いたものか否かです。
「品質管理に万全を期している」という表現は十分ではなく、学会発表の試験で用いられたものと同じ種菌で、しかも同じ栽培方法であるか否かが重要なのです。そうであるなら、学会で発表された薬理効果を持つと言えるでしょうが、そのように踏み込んで栽培方法、品質管理に言及しているメーカーは、私の知る限りでは1社しかありません。また、20年以上にわたって信頼に足る継続的な学会発表を行っている商品は2つしかありません。
私は消費者の方に、その商品がアガリクスの中の何という種類なのか、もしヒメマツタケであっても、その種菌は学会発表のものと同じで、しかも栽培方法も同じか否か、注意していただきたいのです。一方で、ヒメマツタケの薬理効果をかかげる販売者は少なくともこの点を表明すべきだと思います。

6.ヒメマツタケを治療目的で飲用される方へ

「毎日飲んでいれば大丈夫」というものではない
私のクリニックでは、これまで約16年間、ヒメマツタケを皆さんにお勧めし、「生き延びるリスク」対策として、予防的に飲むことも奨励してきました。飲んでおられる方の中には、「先生、これを毎日飲んでいれば大丈夫ですね」とおっしゃる方も少なくありません。 ところが、そういうものではないのです。西洋医学で用いる抗ガン剤でも、有効な場合とそうでない場合がありますが、ヒメマツタケも例外ではありません。私の経験でも、奏効してガンが消失した方がおられる一方で、有効でなかったケースもあります。西洋医学でも代替医療でも、万人に有効ということはありえないのです。 また、有効か無効かの判断についても、ひと言で書き尽くせないのが現状です。私は今のところ、判断基準に腫瘍マーカーを用いていますが、これについてはまた別の機会にお話しすることにしたいと思います。
肝心なのは生活習慣への気配りと改善
ガンは低体温、低タンパク、ストレス、体の酸性化など、現代の私たちの生活にありがちなファクターに起因する生活習慣病です。これらの要因が免疫力を低下させ、ガンを引き寄せているのです。ですから、自らの生活習慣に気配りしないで、「これを飲んでいれば大丈夫ですね」というのは本末転倒です。健康食品はあくまでも、生活習慣への気配りや改善の努力をしたうえで、補完として用いるべきものです。 今、いろいろ問題のある健康食品も出ているようですが、その恐ろしさはその健康食品そのものというより、飲む方の心の中にあるように思えてなりません。最後にこのことに対しても警鐘を鳴らしておきたいと思います。

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